MES#5 -秋月H8LANボードをLANに接続する-
前回の記事で、MES(Micro Embeded System)のコマンドインタプリタについて少し触れてみました。今回も引き続き、MESのコマンド操作に関する説明です。
AKI-H8/3069LANボード(以下、秋月LANボード)には、イーサネットコントロールIC(Realtek RTL8019AS)が実装されており、これを利用することでイーサネット通信を行うことが可能です。
そしてMESは、RTL8019AS用のイーサネットドライバ及び、TCP/IPプロトコルスタックを備えているので、TCP/IPネットワークへ接続することができます。
やってみましょう。
目標としては、秋月LANボードから"www.google.co.jp"宛にICMPエコー要求パケット(PING)を飛ばして無事応答が返ってくることとします。
まず準備が必要です。秋月LANボードとPC、ルータを以下のように配線してください。配線にはLANケーブルが必要です。
※図には描いてありませんが、秋月LANボードとPCはシリアルケーブルで接続してください。そうしないと、ハイパーターミナルを介しての秋月LANボードに対するコマンド操作ができません。
上の図のように接続せず、PCと秋月LANボードをLANケーブルで直接接続してもかまいませんが、その場合はインターネットに接続できないので、ここではやりません。
配線が完了したら、秋月LANボードに電源を入れてください。コマンド操作をするために、PC側ではハイパーターミナルを起動させておいてくださいね。
無事MESが起動すると、ハイパーターミナルの画面にMESの起動画面が表示されると思います。ここまでは、前回の記事までに説明した通りです。
次に、秋月ボードにIPアドレスを設定します。IPアドレスを設定するには"ifconfigコマンド"を使用します。
MESが起動した状態で、ハイパーターミナルの画面に以下のように打ち込んでください。IPアドレスには、ルータが割り当て可能なプライベートIPアドレスを入力してください。ここで入力したIPアドレスが、秋月LANボードに設定されることになります。
ifconfig ne0 [IPアドレス] [サブネットマスク]
ここでは、各端末のIPアドレスの設定は以下の図の通りに設定することにします。
ルータ:192.168.11.1
PC:192.168.11.2
秋月LANボード:192.168.11.111
この3台でLANを構成することになります。
ルータ・PCのIPアドレスや、サブネットマスクがわからない場合は、PCでコマンドプロンプトを開き、ipconfigと入力すればわかります。IP AddressがPCのIPアドレス、Subnet Maskがサブネットマスク、Default GatewayがルータのIPアドレスです。
次に、ゲートウェイとDNSサーバの設定を行います。それぞれ、gatewayコマンドとdnsコマンドを使用することで設定します。ifconfigコマンドと同じように、以下のように入力します。[IPアドレス]には、ルータのIPアドレスを入力してください。
gateway [IPアドレス]
dns [IPアドレス]
DNSサーバは、ドメイン名をIPアドレスに対応させるためのサーバです。ドメイン名を使用して通信相手の端末を指定したい場合に設定します。
以上の一連のコマンド入力のスクリーンショットを以下に示します。
以上で秋月ボードのネットワークに関する設定は完了です。ではここで、各端末にICMPエコー要求パケット(PING)を送信してみましょう。
MESでPINGを飛ばすには、pingコマンドを使用します。pingコマンドの文法は以下の通りです。
ping [IPアドレス]
まずは、秋月ボードから一番近い端末であるルータにPINGを飛ばしてみましょう。pingコマンドを使用して、ルータにPINGを飛ばしてみてください。
ちゃんと応答が返ってくると、「Reply from 〜」と表示されます。もしも応答が返ってこない(失敗した)場合は、以下のように「Request timed out.」と表示されます。
次はPCに向かって、PINGを飛ばしてみましょう。
これも上手くいきました。
では今度は逆に、PCから秋月LANボードに向かってPINGを飛ばしてみましょう。ちゃんと応答が返ってくるでしょうか。PCでコマンドプロンプトを起動して、試してみてください。
秋月ボードから応答が返ってきているのがわかります。
最後に今回の目標であった、googleにPINGを飛ばすことを試してみたいと思います。上手くいくでしょうか。pingコマンドを入力する際に、IPアドレスではなくドメイン名を入力します。
正しく応答が返ってきました。dnsコマンドでDNSサーバを設定していないとドメイン名による指定はできないので注意してください。
MESを起動してから、PINGを飛ばすまでの流れをもう一度簡単に示したいと思います。上では長々と説明しましたが、手順としては以下の通りです。
- IPアドレスの設定
ifconfig ne0 192.168.11.2 255.255.255.0
- ゲートウェイの設定
gateway 192.168.11.1
- DNSサーバの設定
dns 192.168.11.1
- PINGの送信
ping www.google.co.jp
さて、今回の記事はこれにて終了です。意外と簡単にネットワークに接続することができましたね。秋月LANボードが、まるでパソコンのように振舞ってくれました。MESを搭載する利点が見えてきましたね。
次回から、MES上で動くプログラムの作成に入りたいと思います。